金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
広斗は苔とも雑草とも言えないジメッとした草の中を進んで…光って見えたそれを拾いあげた。

「菜乃……コレだけはすごく新しい物だよ。」

広斗はそれを手の平に乗せて私に差し出した。

「 ……コレは、金魚占いの金魚飴…」



“ 生きるんだっ…… ”



瑠璃の声…

瑠璃の…柔らかく高い声が私の心に溶けて弾いたように感じる。


瑠璃…お願い…姿を見せて…


「広斗…瑠璃の魂まで奪ってしまった私に…彼はまだ “ 生きろ…って ”
生きろって…言うのかな……。
私、一緒に行ってあげられなかった……。」


「ねぇ…お願い…瑠璃、出てきてっ!」

巨大廃墟は黙ったまま…私の声をそのまま跳ね返す。


その場で泣き崩れる私の肩を広斗が抱きしめる。

「菜乃……俺からのお願い。
頼むから…俺のために生きて…。
俺の側にいて……生きて。」

私をぎゅっとする広斗に向き合ってその瞳を見つめる。

いつも、男らしい広斗が少し震えているように感じる。

「 広斗……。
瑠璃の占いは…全然いい加減なんかじゃない……
私だけ…専用のすごくよく当たる占い師。

恋の始まり、

運命の出会い、

未来の幸せ、

奇跡、

そして…生きろ…って。

私の側には、いつも広斗がいてくれた。

瑠璃には…瑠璃には分かっていたのかな。」



“ 僕には分かるんだ。”



吹き通るはずの無い廃墟に強い風の流れを感じた。




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