金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「 あなたの未来を泳ぎます。 」


未来……

私に未来なんてあるの…?

人殺しに未来なんて無い。

あるのは…どうすることも出来ない過去と、果てしない後悔だけ。

私という罪人が…ただ生きているだけ。



未来なんて簡単に、軽々しく言って欲しくない。



私は思わず店の奥に目を向けて店員の姿を探す。

人の気配の無い店の奥に手招かれるように…青い水槽の列に導かれるように、私は奥へと進んだ。

奥へ向かう程、モーターの音とあぶくの音は強くなる。

進めば進むほど…水中深くに沈んでいくようだった。


浮き草コーナー

グッピーコーナー

海水魚の巨大水槽の奥……


深い深い青い世界の隅っこ。


彼はレジカウンターのパイプ椅子に両膝を抱えて小さくなって、目を閉じていた。

イヤホンを耳に突っ込んで、全身黒尽くめ。

長袖のナイロンパーカーのフードを深くかぶって…首をうなだれながら、微かに指の先でリズムを取っている。

顔はよく見えないけれど…前髪が軽く色落ちしたグリーンだということは分かる。

やる気も売る気も…生命力すら、あるのか無いのか分からない、この若造はきっと店主ではなく店番のバイトだろう。



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