金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「おいっ!! 死ぬんじゃねぇぞっ。」

彼は…水を含んだ制服の、力無い私をプールサイドに引きずり上げると、自分も咳き込みながら息を切らせて叫んだ。

……ような気がする。

生命力に溢れすぎる腕に私は…身体をよじる。

抵抗すら感じる強い生命力。


胸の奥から…塩素の水がゴボリと戻る。


苦しいとか……

死にたいとか……

助けてくれた男の人の腕に抵抗を感じたり…

私って…厚かましい。



死際に…厚かましくも生きたいと願った。
 


彼は、もう一度…私に力を込めて

「しっかりしろっ。死ぬんじゃねぇぞっ‼︎」

そう、叫んだ。



夏のど真ん中。

私は、離婚したばかりの母とこの町に引っ越してきた。

母が2度目の離婚をしたのは…私のせい…?


2ヶ月前に、堕胎手術をした。

お腹の赤ちゃんは、元カレの子。

けれど…

ママは、少し疑っていた。

口では言わないけれど、私と養父のことを。


どっちでも…

どっちにせよ…

私は、人殺しなんだから。

疑いたければ 疑えばいい。



夏の盛り。

蝉の声が耳に溢れ返る……


7日後には死んでしまうというのに、死を目前にして 蝉の声は生命力に溢れすぎていた。

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