金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
うまく言えないけれど…とにかく、

死にたい訳では無いけれど…

死んだら、それはそれでいいと 思った。

両手を広げて……

私という十字架は、この瑠璃色の水面に墜落する。

一瞬で、無数の蝉の声が…無数のあぶくの音に変わり全身を引っ張られた。

水底に。

どこまでも、どこまでも…堕ちて水底に墜落していく。

あぶくの声が耳元を通り過ぎ…上へ上へと昇っていく。

てっぺんで…乱反射する綺麗すぎるあぶく達に、私は導かれて…



このまま…死んでも…いいかも…

そうすれば、私はこの罪から解放されるの?

あの子と一緒に…死んでも…

そんなもんかな。



そう思った瞬間、私の爪先はプールの底をとらえて、制服のスカートが浮力でユラユラめくれ上がった。

金魚の尾びれのように、ヒラヒラと私の身体を泳がせていく。


知らない町、知らない学校、知らない人たち……

まさかの昼下がりに、こんな所で私がプールで溺れていたとしても 助けに来る人なんかいない。


おかしいな…

死んでもいい…と思ったはずなのに、

“ 息ができないっ”…とそう気づいた時には、水の色や あぶくの乱反射の美しさは、ぐにゃりと歪んで…

真っ黒になった。


思わず…身体が勝手に、叫ぶ。

声になんてならなくて…もがく。

“ 助けてっ!”

声では…ない。

息を…探す。

空気はあぶくになって 逃げていく……。

私って…すごく勝手。

死んでもいいなんて思ったくせに、


“ 誰か…。生きたい…生きたいよ”

そう、もがいた私の手首を……


その手は 掴んだ。



「 つかまれっ‼︎ しっかりつかまれっ‼︎ 」



遠く…遠く…かなり遠くから 知らない男の人の声がした。

筋肉質な腕…

血管の膨れ上がるその手の力に、

私は思わず両手を伸ばした。



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