金魚占い ○°・。君だけ専用・。○.
「一回休みも、嘘っ!!」

言ってしまった後に、息を切る私。

「親友…だろっ。」

瑠璃は、その流し目を静かに金魚の水槽へと戻す。

「瑠璃………。」

「ん〜っ?」

瑠璃は返事をしながら、金魚のエサの袋に手を伸ばす。

「瑠璃、水槽の向こう側に立って…。」

「んっ?何?」

「いいから、立って。」

「………?何?」

赤や白、マーブル模様の金魚たちが泳ぐ水槽を隔てた向こう側に、瑠璃の顔が映り込む。

「正面の人に…キス。 そうでしょっ。」

「……………。」

「その水槽に頬をつけて…。」

私は水槽越しの瑠璃を見つめる。

「目を閉じて…。」

瑠璃は、その水槽に両手をつけて私に言われたように目を閉じる。

「…こう?」



冷たい…ガラスケース越し…

私は、そっとその水槽に唇を寄せる……

ユラユラする、瑠璃の横顔に軽くキスをする。



暗い店内のブラックライトの光は、ガラスケースに反射して昼間よりも一層…計り知れない程の神秘さを伺わせた。

水槽を泳ぐ金魚たちは、まるでこの空間を羽ばたいて飛び回っているのではないだろうかと思う程…美しく、自由。

水槽に寄せる唇は、冷やっとして…エアポンプからのブクブクの音とたまに金魚が跳ねる飛沫の音が、耳全体を支配した。

ゆっくりと唇を離すと、瑠璃もそっと目を開ける。

「(笑)私も、エサやり…手伝うっ!」

一瞬…見つめ合った空気を壊すかのように、私は頷く。

「…………あぁ。うん。」

慌てて目を逸らす瑠璃の横顔に、やっぱりノイズが走ったように感じた。

けれど…すぐに照れくさそうに笑ういつもの瑠璃から、私はエサの袋を手に取った。
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