妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~


「しかも帰り際、母さんに引き止められてたって聞いたぞ? 疲れてる時はスクールに近づかず真っ直ぐ家に帰れ」

「大丈夫。女子同士意気投合してるんだから、お気になさら……」


寝室のクローゼットの戸を開き、ハンガーにジャケットをかけながら恭介君のボヤキに反応する。

しかし、言い終える前に後ろから抱きしめられ、不自然に言葉が途切れてしまった。


「美羽のことだったら、なんだって気になる。ついでに言うと、今は触れたくて仕方がない」


瞬きを三回繰り返すよりも先に、唇が奪われる。

啄ばむように唇が重なり合うたび甘美な熱が広がり、体の奥底がじわりと痺れた。

誘導されるかのように彼に体重をかけられ、足がゆっくりと後退し始める。

進む方向から、私たちが辿り着く先がベッドだということは明白だ。


「だめっ。夕ご飯できてるよ? お腹空いたでしょ?」

「夕飯は食べる。でもその前に」


互いの視線が絡み合った瞬間、恭介君は我に帰ったのか、そっと私から体を離した。


「その顔。美羽も腹が減っていそうだな。食べずに俺の帰りを待っていてくれたのか」


彼はこくりと頷き返した私を愛おしげに見つめ返したあと、額に不意打ちのキスをする。

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