妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~


「あいつと俺とで迷っているなら、悪いが俺も手を緩める気はない」


あいつと俺。

俺に恭介君を当てはめることができても、あいつが誰を指しているのか、すぐに理解できなかった。


「あいつって、もしかして高志さんのこと?」


名前では伝わらなくて「私の従兄弟」と言い直す。すると即座に恭介君は「あぁ」と認めた。


「ほかの男に奪われたくない。美羽の気を引くためになんだってする」


彼の腕を掴んでいた私の左手を、恭介君が支え持つように掴み直し、ゆっくりと上昇させる。

そのまま私の薬指の辺りに口づけを落とし、真剣な眼差しを向けてきた。

一気に高鳴り出した鼓動が、恥ずかしさと緊張感を煽る。顔を熱くさせて、私は首を横に振った。


「その迷いは全くないよ。高志さんと結婚なんてしない。はっきり断るつもりでいる。それと、他の誰かと比較になんてならないくらいに、恭介君は私にとってかけがえのない人だよ。この気持ちが追いつくまで、もう少し見守っていてください」


ゆっくりと彼の腕の中に閉じ込められていく。

包み込むように抱きしめられ、私は恭介君の胸元に頬を押しつけながら目を閉じた。

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