妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「美羽、ありがとう」
彼の優しい声がくすぐったくて、自然と笑みが浮かぶ。
心の隙間に満たしてくれるこの力強い温かさに、これまで何度も救われていたことを思い出す。
今も変わらず、泣きたくなるほど心地よい。
「従兄弟への対抗心は必要ないってことがわかって安心した。でも、美羽が首を縦に振ってくれるまでこの焦りは完全に消えないだろうから、こうやって気持ちを伝え続けるのを許してくれ」
抱きしめてくる彼の力がわずかに強くなり、耳元で真摯な声が響く。
「誰よりも大切な君を、俺の手で幸せにしたい」
胸が熱くなる。幸福感で体全部が満たされていく。
恭介の手を取れば、きっと言葉通りにこれからたくさんの幸せを私にくれるだろう。
彼の気持ちをまだ受け止められないのは、それに見合うだけのものを自分自身が持っているのか不安になるからだ。
真面目な性格に容姿もステータスも圧倒されるほど完璧。だからこそ、私でいいのかとどうしても考えてしまう。
腕の力が弱まり、恭介くんが微笑を浮かべながら私の顔を覗き込んでくる。
「プロポーズの返事だけでなく、もうひとつ、聞かせてもらいたい返事がある」