一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「おい、海音、萌音ちゃん、取引先から戻ったあとずっとお前を待ってたんだぞ。そんな上の空で、萌音ちゃん、不振に思ったんじゃないか?って、おい。マジか、えげつないな」

萌音が課を出ていくと、海音の元バディである中武主任が海音に近づいてきた。

「えっ、何がえげつないんですか?」

「こことここ。キスマークに口紅の痕って、お前、佐和田建設の姉ちゃんと何してきたんだよ。商談に行ってきたんじゃないのか?わあ、香水くせぇ」

中武主任の言葉に、慌てて洗面所に駆け込む。

主任の言う通り、海音の首筋にはくっきりとしたキスマーク、ワイシャツには口紅の痕がついていた。

海音が自身の匂いをかぐと、あの佐和田の甘ったるい香水の匂いが鼻をかすめて吐きそうになる。

足技をかけられている時についたのだろう。

゛萌音はこれを誤解して出ていったのか?゛

佐和田の襲撃で、心労も身体疲労もマックスになっていた海音だったが、気力を振り絞り、更衣室に入って、置いてあった作業着に着替えた。

課に戻ると、萌音の席に中武主任が座っていた。

「昼間からお盛んなのは勝手なことが、萌音ちゃんを傷つけるな。真面目なお前を応援しようと思っていたが、こんなことなら話は別だ」

中武主任がいつになく真面目な顔で睨んできた。

「これは佐和田に・・・」

「言い訳は俺にしなくてもいい。萌音ちゃんからたった今、部長に希望があった。バディは海音から俺に変える」

「えっ?嫌です。萌音のバディは俺しかいない」

「萌音ちゃん自身が嫌がってるんだ。仕方ないだろう」

海音はハァっとため息をついた。

男社会で生き残るためにいつも冷静で何事にも動じないツンツンモード全開の萌音が嫌がるくらいだ。

かなりの嫌悪感を抱かれたに違いない。

一昨日自分を運命の片割れだと言って抱いた男が、他の女と同じことをしたと思っているのだから当然だろう。

海音は、罠にはまった自分自身を不甲斐なく思いながら

「では、誤解が解けるまでの期間限定にしてください。絶対に萌音の信用を取り戻しますから」

心と身体を許した途端に発覚した海音の浮気疑惑。

逆の立場なら海音は発狂していただろう。

海音は戻らない萌音の姿を求めて、課の入り口をじっと見つめた。
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