一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
『海音の隣の席から中武の隣の席に荷物を移動させたそうだよ。インテリア部門とも席が近い。戻っておいで』

何とはなしにブラブラと佐和山建設本社周辺を歩いていた萌音のSNSアプリに風太郎からのメッセージが入った。

『森田夫妻の家具製作のため、萌音ちゃんはしばらくインテリア専門で仕事をすると他の社員には言ってある。それに女性社員二人が支えになる方が心強いだろうという中武の配慮だとも伝えてあるから話を合わせるようにね』

風太郎の、社長らしからぬ細かい配慮に泣きそうになる。

子供の頃から我慢を強いられてきた萌音は、自己完結することが多く、他人の前で泣くことはほぼ皆無だ。

しかし、これまでは誰かを信じて裏切られそうになった経験はないから、今泣きそうになっている自分を受け入れることは間違っていないだろうと自己弁護する。

いや、まだ裏切られたとは決まったわけではないのに、疑う余地の残されていない証拠の数々を見せられて、さすがの萌音でもキャパオーバーだ。

゛私は恋愛に不向きなのかも゛

恋愛力に判定があるのなら、間違いなく萌音は゛凡人以下゛レベルだろう。

某格付け番組の俳句の先生なら

゛話にならない。精進しなさい!゛

と怒るに違いない。

ふと、百人一首の中の和歌

゛逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし゛

が思い浮かんだ。

あなたに会うことがなければ、あなたを恨んだりこんな切ない思いをすることはなかったのに・・・

と、ざっと言えばこんな内容の和歌だ。

゛高等部の頃はこの句を歌った中納言朝忠の気持ちなんて全然わからなくて首をかしげてたのにね・・・゛

萌音は自虐的になりながら設計課に戻ることにした。
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