一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「ただいま」

返事が返ってくるはずのない我が家。

22歳にして一家の主になった萌音だが、はっきり言って一人暮らしには広い、というのが正直な感想だ。

3LDK+Sの広い間取りは、掃除に困るだけでなく置くものもなくてガランとしている。

卒業課題のために最低限のインテリアを購入して飾ったが、独り身の萌音には不要と思えるものも多かった。

3LDK+SのSはサービスルームのSで、居室に数えられないので価格が安いといった利点がある。

建築士でインテリアやエクステリアのデザインを手掛ける萌音は、そこに図面台と建築模型、パソコンなどを置いた。

キッチンとバス、トイレ、寝室とサービスルーム。

ほとんどテレビは見ないのでリビングと残り二つの部屋は飾りになっている。

夫婦が暮らす部屋をイメージしたので、ベッドは無駄に広いキングサイズ。

意外と狭いところが好きな萌音は、そのベッドに慣れるまで時間がかかった。

今では身体にフィットするマットレスにすっかり魅了され、外出先では眠れなくなる被害がでている。

萌音はスーツの上着を脱ぐと、キングサイズのベッドに大の字で寝転がった。

今日は緊張の連続だった・・・

わけではなく、大学生活の延長のようにすんなりと受け入れられる仕事環境だった。

今後、3年間バディとして仕事をしていくことになった佐和山海音。

びっくりするほどのイケメンだったが、それを鼻にかけるわけでもなく、女性に媚を売るわけでもなく、仕事のできる建築士だった。

一緒にいても疲れない、初めて会った気もしない。

どこか知り合いのようで安心する雰囲気もあった。

言いたいことも言えるし、その事で喧嘩になることもない。

゛彼はもしかしたら私のソウルメイトかもしれない゛

今日は一日だけで何度もそう思った。

ソウルメイトとは、前世から関わりのあった魂の友。

スピリチュアルの世界では、魂を成長させるような共通の使命や目的、運命を一緒に歩いて行く仲間と評される。

相手は同性のことも異性のこともある。

萌音は宗教にこだわりもないし、霊的なものをすべて信じているわけではない。

ただ、中等部2年生の時に聞いた教育講演の内容に影響を受けてから、スピリチュアルな何かがあることだけは信じたいと思っているだけだ。

こんなことを海音が聞いたら顔をしかめるだろう。

だが、これまで生きてきた22年間で初めてそう思える相手と出会ったのだ。

萌音はゆっくりと目を閉じて、中等部2年生の頃のことを思い出していた。


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