一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「こんな馬鹿そうな男ならまんまと騙されると思ったのに、とんだ計算ミスだわ」

ソファにふんぞり返る佐和田は天井を仰ぎ見て

「佐和山建設も、道端産業も、洋輔も桜も、海音も、萌音も、近藤駿太も・・・!みんな不幸になればいい」

と、言った、確かに言い放った。

「申し訳ありませんが、大事な人たちを陥れられて、はい、そうですかとは終わることはできないんですよ」

そう言いきったのは、他でもない佐和山風太郎だった。

「あなたは自分の身勝手で周りに迷惑をかけた。いくら婚約者が婚約破棄を言い渡してきたとはいえ、それは海音にも萌音ちゃんにも関係ないことだ」

とても怒っているようには見えない風太郎に代わって

「そうです。至らなかったとすれば、父親同士が婚約を解消したときに、僕や父からあなたにも何らかの謝罪をすべきだった。私も当時は高校生だったとはいえ、当時10歳のあなたの気持ちを汲み取れなくてすまなかった」

それまで黙って聞いていた、洋輔が佐和田に謝罪した。

「とはいえ、佐和田さん、君は自分のことしか考えていない。・・・とにかく君の策略はすべて失敗だ」

「だったら、この茶番劇をマスコミにリークしたら面白おかしく書いてくれるかしらね?」

不敵に笑う佐和田は全く反省の色が見られないようだ。

「佐和田さん、それは恐喝になりますが敢えての発言でしょうか?」

夢谷弁護士は録音していたICレコーダーを取り出して佐和田に見せた。

「弁護士が同意もなく録音してもいいの?!」

興奮した佐和田にも夢谷弁護士は全く怯まない。

「生憎だが、君のお父様にも全て事情を話して録音の許可をもらったよ。この部屋の近くの別室で今までのやり取りを聞いていたはずだ」

「お父様が?なんてことするのよ。父は心臓が悪いのに」

自分がやったことは棚にあげての佐和田の言い分には呆れる。

「君は各界の大物を敵にまわしたんだ。今度からは相手を選ぶといい」

風太郎は、佐和田産業の娘が佐和山建設と道端産業および関係者、そして長嶺教授の愛娘に手をかけたことに腹を立てた野瀬総合銀行の頭取が、佐和田産業への融資を取り消すと言っていることを佐和田靖子に伝えた。

「ええ?父も会社も関係ないじゃない」

「そうだ。同じように海音も萌音ちゃんも、君の私怨には関係なかったんだよ」

静かに俯いた佐和田に、風太郎が珍しく厳しく見える表情で言って聞かせた。
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