一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「佐和田さんには他にも確認したいことがあります。別室のお父様、近藤駿太さんも含めてお話を聞かせてください。そこには警視庁の人身安全対策チームの水谷警部補が同席しますのでご了承ください」

夢谷弁護士の言葉を聞いて、桜坂CEOが佐和田を支え、三人は部屋を出ていった。

「もしかして野瀬って、あの野瀬教授の旦那さんなのか?」

「ああ、野瀬教授と長嶺教授、流川元教授はN大学の同期で親しい友人なんだよ。もちろん、野瀬頭取も仲良しだ」

自分の両親の話なのに全く知らなかった萌音は、憧れの存在に近づくすべがあったにも関わらずぼんやりしていた自分を笑った。

゛灯台もと暗し゛だったのだ。

「長嶺教授は怒ると怖いよ。敵に回したらいかんやつだ」

ニコニコ顔の風太郎はちっとも怖がっているように見えず笑える。

「娘のしたことで会社が潰れるようなことがあってはならん。あの娘はきっと今回のプロジェクトからも外され、会社の業務にもたずさわれなくなるだろうな」

「当然でしょ?昔から人を目の敵にして。単なるやっかみかと思って放置してたけど、洋輔さんがらみだったなんてね」

「すまない。桜、海音くんも。萌音さんも辛かったね」

洋輔は恭しく頭を下げた。

「そして、お父様にも佐和山建設にも、関係各社にもご迷惑をお掛けしました。罰なら私が受けます。どうか道端産業を見捨てないで下さい」

「何を言ってる。洋輔くんは被害者じゃないか。桜の運命の片割れをどうこうしようという気はない。安心してくれ」

土下座しそうな勢いの洋輔に、慌てて風太郎は言った。

「これでかたがつくといいな」

「そうだね」

海音と萌音は、他人事のように肩を寄せあってぼんやり窓の外を眺めていた。

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