一途な溺愛王子様
ヒリヒリする自分の手を見ると、あの女子と取っ組み合った時に引っかかれた傷が生々しい。

ネイルが引っかかったせいで、首のところにも同じような跡があるのを、指の腹でなぞって確認した。


「中学生のケンカじゃあるまいし、ばっかみたい」


中学の頃はこういうケンカが時々あった。それは同級生の時もあれば、上級生とケンカする羽目になった事もあった。

上級生は呼び出されてリンチだ。あれは怖い。

だからそれに比べればこんなもの、なんともない。けど、高校生にもなってこんな子供みたいなことになると思ってなかっただけに、精神的に参っていた。


「……はぁ」


と顔を上げて、屋上へと続く扉の小窓から差し込む日の光を見つめる。

一度も拭かれたことのないその窓から差し込む光はくぐもって見えて、今のあたしにはちょうど良い。

眩しすぎず、暗すぎず。頭を冷やすにはちょうど良い光加減だった。


「気の強い性格も困ったもんだ」


なんて、自分の性格に対して自嘲気味に笑った、その時だった。


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