一途な溺愛王子様
「……ひめ?」


ビクリ、とあたしの体は思わず飛び跳ねた。

それもそのはずだ。だってオバケが出たのかと思ったから。


「はぁ、やっと見つけた……」


オバケはそう言って、腰に手を当てて息を整えている。


「カ、カンナ?」


なんでここにいるの?

そう言いたいのに、声が出ない。驚きすぎて、言葉はどこかに飛んでいってしまったみたい。


階段下であたしを見上げているあの人物は、本当にオバケなのかもしれない。

だって今はもう五時間目の授業も始まってるし、それにカンナはあたしのことを避けてたはず。

お昼に購買部で見かけた時、思いっきり目を逸らされたし……。

間違いなくあたしと目が合った。にも関わらず、彼はあたしから目を逸らした。

それは出会ったばかりの頃と同じように。


「学校中探し回って、やっと見つけたよ」


あたしを探してた?


カンナは息を整えながら、階段を一歩一歩のぼり始める。

ほんのり汗ばんだ肌がほのかに差し込む日の光に照らされて、まるでカンナが輝いているように見えた。


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