一途な溺愛王子様



清々しいはずの朝。だけど、どうしても最近はドロドロしい感情が朝からあたしの心を支配している。


「ちっ!」


そんなドロドロとした感情があたしの口からこぼれ落ちたら、それを聞き逃さなかったのはクラスメイトで中学からの友人でもある“コウ”こと、真田(サナダ) 康介(コウスケ)だ。


「ちっ、てお前……朝っぱらから舌打ちかよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」


いやいやいや、そう思ってあたしはコウの胸ぐらを思わず掴んだ。


「コウ〜……アンタ、誰のせいでこんな顔になってるか知ってる?」


あたしは掴んだコウの胸ぐらを今度は両手で掴みなおし、そのまま両手で締め上げた。


「あっ……やっぱ、俺のせい?」

「当たり前でしょ!!」


わかってるくせにそういう白々しい態度がまたムカつく。そう思うとあたしの手はさらに力を増した。

コウは知っているはずだ。あたしはいつもあいつの魔の手から逃れるためにどれだけの力を費やしているかを……それなのにコイツときたら……!


「ギッ、ギブギブ!」


コウは苦しそうに、あたしに掴まれてる手を叩いた。まるでプロレスリングの上で技をかけられてリングをタップするかのように。



「ってか俺、アイツ来る前にいつも教えてあげてるじゃんかよ」



言葉を絞り出すようにしてコウは顔をしかめながらそう言った。あたしはその言葉を聞いて、コウの襟を離した。

ゲホゲホと咳き込みながらも肩をなで下ろすコウ。そんなコウを見下ろしながら、あたしはコウに向かって、こう吐き捨てた。


「それって、いつもカンナが来るほんの少し前を見計らって、でしょうが!」


そう言いながら、今度はコウの制服のネクタイをキツく締め上げた。


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