一途な溺愛王子様
女子たるものおしとやかに……とは、よく死んだおばあちゃんが言っていたものだ。

だけど、あたしはそういうタイプには育たなかったみたい。噛み締めた奥歯がギリリッと音を立て始めていた、そんな時。


「呼んだ?」


颯爽と現れたのは、言うまでもなく不快なその男。


「げっ、カンナ!」


あたしが悲鳴にも近い叫び声をあげたというのに、コウは真逆でその不快な男の声を聞いた後、声にならない声でその人物に助けを求めている。


「ひめ、おはよう」


爽やかな空気の中でカンナは爽やかにそう言ってのけるけれど、あたしにとってはむしろ朝から地獄の景色を見ている気分になる。

げんなりしているあたしの隙をついて、コウはするりとあたしの手から抜け出し、カンナの背後へと逃げ隠れた。


「朝から人のクラスにまで何の用よ? アンタはクラスが違うでしょ」


毒でも吐き出すみたいにしてそう言い切った後、手をヒラヒラとさせてあしらってみるも、カンナはそんな態度すら気に止めず、なおも爽やかな笑顔を向けて来る。

その心折れない態度がまた、不快度20%を上乗せされた気分だ。

ちなみに現在の不快度はゆうに100%を超えてるのは言うまでもないけれど。


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