一途な溺愛王子様
「じゃあ、プレゼントでもいいよ」

「なんでそーなんのよ。現金で返す! それ以外ないからね!」


プレゼントなんてもっと嫌だ。あたしが買ったものをカンナはずっと持つわけでしょ? 想像しただけで限界だ。

カップルでもないのに下手なことはできない。つけ込まれる隙は作ってはいけないって本能が言っている。

あたしは財布の中から千円札を取り出し、カンナの鞄の外ポケットにそれを突っ込んで、カンナを抜いて先を歩いた。


「じゃあそれでチャラで」

「あっ、ズルしたね」


なにがズルなのか。そもそもお金を返したいだけなんだけど。


「お釣りはいらないから」

「ひめはほんと、男前だよね」

「うるさ……」


男前とは花の女子高生に向かって失礼な。そう思って振り返るとーー。


「随分多いから、これは返すね」


カンナはあたしに抱きつく形で、肩に下げていたあたしの鞄の外ポケットに千円札を突っ込んだ。


ふわりと香るカンナの香水の香り。甘くて、それでいて優しい香り。


「……プレゼントくれるの、楽しみにしてるよ」


カンナは固まったままのあたしを見て、クスッと笑った。

ムカつく笑みなはずなのに、あたしは動けない。ムカつくけど、一瞬ドキッとしてしまったじゃん。


そんな自分が、何よりもムカつく……。


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