一途な溺愛王子様
「それじゃ、出ようか」


カンナはスッと立ち上がった。立ち上がったと同時に、テーブルの上に丸めて置かれていた伝票もスッと掴み、あたしに背を向けた。


「あっ、ちょっと」


あたしのケーキいくらだったっけ? レジに行く前に金額確認しようとしてたのに。まぁ、レジで確認したらいいか。

カンナはさっさとレジに行ってしまったので、あたしもそれに続いてレジへと向かった。


「ありがとうございました」


荷物を持ってレジへと向かうと、お会計をさっさと済ましてしまったカンナが店員さんに頭を下げられて店を後にしようとしているところだった。

……えっ、早くない?!

驚きつつも、あたしはカンナに追いつき財布を取り出した。


「さっきのお会計いくらだった? ケーキ代払うから教えて」

「覚えてない」

「……は? んなわけないでしょ。ちゃんと払うから教えてよ」


あたしは必死になって記憶の中でメニューを思い出そうとした。

ショコラケーキはいくらって書いてたっけ……?


「いい、いらない」

「そう言うわけにはいかないから。あたしはカンナに奢られる義理なんてないし」


カンナに貸しなんて作りたくもないし。


「じゃあ、今度奢ってよ」

「奢らないし、むしろ次なんてないから」


今回のは特別だ。だから次なんてない。こんなデートみたいなこと、これが最初で最期にしたい。


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