一途な溺愛王子様



その日から、カンナがあたしのクラスに来ることも、帰りを待ち伏せすることもなくなったーー。



平穏だと思っていたこの状況も、いざなってしまうと、それをどこか寂しいと思う自分がいる。


薬は毒ほど効かない、ってことわざを聞いたことがある。

良い事は悪い事ほど強い影響を及ぼさないらしい。

平穏を求めていたにも関わらず、それを寂しいと思うのは、完全に毒に飲まれてしまったせいに違いない。

あたしはカンナの事を考えないようにすればするほど、カンナがあたしの脳内を占める。


けれどそれも一時のことだった。

テスト勉強に、学校行事。それらをこなしながら忙しくしていると、気がつけば季節が移り変わろうとしていた。


< 86 / 208 >

この作品をシェア

pagetop