一途な溺愛王子様


「……うう、気温だけじゃなくあたしの財布も寒い」


ガコン、と自販機から吐き出された缶コーヒー2つとミルクティー、あとはココアで計4つ。


「おいおい、ひめはじゃんけんに勝った勝者だろ? 奢ってやるよ! くらいの勢い見せろって」


二組に分かれて、掃除を続ける組と、ジュースを買いに行く組に分かれた。もちろんじゃんけんに勝ったあたしはジュースを買い行く組。

自販機のある食堂近くまでやってきたあたしと、ジュース持ち役のコウ。


「あたしは太っ腹じゃないのよ。誰だ勝った奴が払うなんてルール決めたのは」


せっかく勝ったのに、喜べないし、むしろ喜びなんてないじゃん。そう思って唇を尖らすと、その唇を指でつまんでコウが笑ってる。


「いや、ルール変えたのひめだろ」


コウの手を振り払って、自販機の取り出し口に向かって手を伸ばした。そこからから拾い上げた缶ジュース達をコウは全部あたしの手から奪って、二つはポケットに入れた。


「ひめはミルクティーだっけ?」

「そうよ、返してよ」


手を差し出すとヒョイっと腕を伸ばして持ち上げられた。そんな風にされるとリーチの差で届かない。


「じゃあコウのコーヒーもらうから」


そう言うとコーヒーを持ってる方の手も空高く伸ばされた。

仕方ない。そちらがその気ならば……。


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