一途な溺愛王子様
そんな風に手元しか見てなかったせいで、コウが立ち止まっていることにも気づいていなかった。


「コウ、何見てんの?」

「ちょっと、あっちから行こうぜ」

「なんで? 遠回りじゃん……」


突然反対方向へと体の向きを変えさせられて、変だなって思った。

だからあたしはコウの背中越しに何を見たのか確認しようとしたら……その先には、カンナの顔があった。


「好きです、付き合ってもらえませんか」


ちょうど告白の現場だったみたい。

久しぶりにカンナを見た気がした。廊下で見かけたり、すれ違うことはあったけど、こんなにちゃんとカンナを直視したのはかなり久しぶりな気がした。

あたしはカンナと目が合った。気がした。

ちょうどあたし達はカンナ側からは見える角度にいたから。


「……そだね、遠回りするのもいいかも」


あたしはコウの腕を掴んで駆け出した。

人の告白を邪魔したくなかったから。それに……。


あれ、なんて返事するんだろう。


これ以上カンナを見たくなかったから。


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