転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「婚約式については、父上の病状が安定するまで延期としてほしい」
「それは当然です。だって……」

 自分は、そのあとなにを言いたかったのだろう。一瞬口ごもり、それからヴィオラは思いきって口を開いた。

「だって、陛下のことが心配ですもの」

 声に出してしまえば、自分でもするりとそれに納得する。
そうだ、心配だったのだ。
 手は冷たくなっているし、呼吸もせわしなくなっている。自分が動揺しているのにようやく気がついた。

(変なの。もしお父様が倒れたって聞いても、こんなに動揺しないだろうに)

 リヒャルトや皇妃は冷たい人だと言うし、おそらくそれも皇帝の一面なのだろう。
 けれど、ヴィオラを守るための婚約を認めてくれたり、長年尽くした皇妃に報いたいとヴィオラに相談を持ちかけてきたり。
 事件を起こした妃達を処刑するのではなく、離宮に遠ざけるだけですませたり、謹慎だけですませたりと意外に甘いところもあると思っている。

(……そっか、私、嫌いじゃないんだ……陛下のこと)

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