転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 薬と水は受け取ったものの、顔をしかめたセスにニイファがぴしゃりと言う。セスに対してはちょっとばかり厳しい。

(……でも、セスは命をかけてくれたんだもの)

 セスが届けてくれた証拠は、今はリヒャルトが保管している。どこに保管しているかヴィオラは知らないし、聞くつもりもない。

「腹が減った」と育ち盛りのタケルが厨房に行って頼めば、軽食くらいはいつでももらえるので、セスの食事も、今のところは怪しまれずに調達することができている。

「……うぇ、苦い」

 薬を飲みほしたセスは、しかめっ面になった。
そして背中にあてがっていた枕をずらし、顔をしかめながら横になる。皿を脇に置いたニイファが、素早くセスに手を貸した。
 死にかけるような大怪我だったのに、ここまで回復しているのだから、やはり日頃の鍛錬が違うんだろう。

「――どうして、証拠を持ってきてくれたのかしら」

 セスの様子を見ていたら、自然と口からこぼれ出た。彼の返事は最初から期待していない。ただ、疑問に思っただけ。
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