転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 最後に正面から父と目を合わせたのは、いつだっただろう。もう、覚えていないくらい昔のことだ。
 イローウェン王国を離れることは幸運だと思った。そして、オストヴァルト帝国に根を張って生きていくのだと決めた。
 ニイファとふたりでひっそり生きていけたらそれでいいと思っていたけれど、この国に来て半年が経った今、ヴィオラのことを大切に思ってくれる人達に囲まれている。

「まあ、急にどうなさったんですか? 婚約式は明日ですわね。楽しみですわ」

 リヒャルトとヴィオラを出迎えたザーラは、表情だけは明るく取りつくろっていた。本当にティアンネ妃と陰でつながっていたのだろうか。
 ティアンネ妃との連絡が取れなくなったことを、訝しんでいる様子は見受けられない。

「こちらの都合で迷惑をかけることになりましたが、明日の婚約式を無事に執り行えそうですよ」

 リヒャルトも、にこりとしながらザーラに返す。
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