転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 関わりたくないと思っていたはずなのに――それでも、心の奥底では見放されたくないとまだ願ってしまうのだ。

(ザーラの罪を暴いたら、確実に私は見放される)

 罪を暴いたところで、ザーラが罰せられなかったらどうしよう。
 見放されたのだと、いや、最初から自分は父の目に入っていなかったのだと改めて思い知らされたら?
 ヴィオラだって父を見放したのに、父に見放されるのは怖い。なんて身勝手なんだろう。
 足が止まりそうになったヴィオラの手に、リヒャルトの手が重ねられた。彼は、そのままヴィオラの手を引いて歩き出す。

「……俺がいる。母上も。それから、ニイファも。タケルだってついているんだ」
「そうですね」

 家族以上にヴィオラを大切にしてくれる人達に囲まれている。だから、本当は何も怖くないはずなのだ。ヴィオラが勝手に怯えているだけで。

(……最後くらいは、私を見てくださったらいいんだけど)

 それなのに、未練がましくそんなことを考えてしまう。決別前に、一度は向かい合わなくては。
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