転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
(……リヒャルト様と一緒なら、なにがあっても大丈夫)

 リヒャルトと繋いだ手に、きゅっと力を籠める。

(……ここで、私は決着をつける)

 国に帰るつもりはない。ただ、父とザーラの私欲のためにヴィオラを利用されるのは困るのだ。
 それぞれ席につき、目の前に銀のカップが置かれる。

(毒は入っていないと言いたいのね)

 銀は毒物に反応するという言い伝えがあり、そのために王侯貴族の間では銀の食器が用いられている。陶器のティーセットもあるのに、わざわざ銀を持ち出してきたということは、ヴィオラに毒を盛るつもりはないと見せているということだろう。
 父がこちらに向けているのは、他人行儀な笑み。ヴィオラを利用したいという思惑が、ヴィオラには見て取れた。
 もちろん、一国の王としては利用できるものは利用すべきだ。それが、民のためになるのなら。
 父の顔を見ながら、不意にそんな風にも思う。心の中でのこの覚悟は、日本人だった〝咲綾〟は持ち合わせていないものだ。
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