死者の魂〜最期のメッセージ〜
「河野くん、ありがとう」

藍が微笑むと、大河は頰を赤く染める。「あ、いえ……」と小さく大河は呟き、朝子と聖は小さな黄色い悲鳴を上げた。

藍は前を見つめる。真剣で、それでも優しさを秘めた朝子たちの目。もう怖くなどない。

「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

藍は深く頭を下げる。そして、顔を上げて言った。

「突然未来を奪われた人たちの未練を晴らしたいです。どうか、事件解決のために協力してください」

青磁の死の真相だけではなく、全ての人の未練を晴らしたい。そう藍は心から思っている。殺された人々の幸せに生きるはずだった未来を、もう取り戻すことのできない未来を、その無念の声を、藍はこの耳で聴くことを願っている。

「……当たり前じゃん」

朝子が藍の頭を犬を撫でるように何度も撫でる。藍はくすぐったくて笑った。しかし、その目から涙がこぼれていく。

「ありがとうございます……」

藍はまた頭を下げる。朝子が「何泣いてんのよ〜!!」と藍の背中を叩いた。
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