たとえ君が・・・
ゆっくりと手術室の重たい扉を開けるとそこには手術用のベッドの上で点滴をして手術着に身を包んでいる若葉が顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

広い無機質な部屋の中でやけに儚く見えるその姿に良助は駆け出していた。

更に痩せてしまった若葉の体を強く強く抱きしめる。

若葉は安心したかのように声をあげて泣き始めた。


しばらくそうして抱き合ったあと、良助は若葉の耳元でささやいた。
「愛してる。若葉。愛してる。ごめんな。ごめん。若葉、ごめん。」

気の利いた言葉など出てこない。
でも心からの言葉を若葉に伝える。

そして
「赤ちゃん、産もう。産んでくれよ。もう一度やり直そう。若葉。愛してる。」
と良助が告げると若葉は少し体を離し、こくこくと首を縦に振って頷いた。
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