かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「そういう反応も、可愛すぎて困る」

パリで初めて長嶺さんに出会ったとき、一瞬、時が止まったような気がした。帰国してからも頭のどこかで彼のことを考えていた。どうしたら好きになれるとか、嫌いになれるとか、考える暇もないくらい……恋に落ちるのは一瞬なのだと、今思い知らされた。

「あ……っ」

背中に回されていた手が不意に移動して、鼻からぬけるような声が漏れた。太腿を撫でられ小さな声をあげて身を捩れば、唇の隙間に舌を差し入れられた。羞恥に睫毛を震わせて、私はそれに応えようと自ら唇を開く。合わせた合間から熱い吐息がこぼれ、再び速まる鼓動が息苦しいくらいだ。でもこの上なく気持ちがいい。

「芽衣、愛してる……」

長嶺さんの手が全身を這うだけでめろめろと身体から力が抜けた。

「私も……愛してます」

満ち足りた気分で何度も身体を揺らされて、私と長嶺さんの長い長い夜が更けていった――。
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