かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「一階にも二階にもトイレと洗面台はあるけど、二階のバスルームにはシャワーしかないから、バスタブに湯を張って入りたいときは一階のバスルームを使ってくれ」

「わかりました。ありがとうございます」

「一日でも早く俺を好きになってもらえるよう願っている。おやすみ」

長嶺さんが腰を屈めて、私の頬に軽く唇を掠める。

こうして長嶺さんからおやすみのキスをされるのは何度目だろう。初めは驚いて戸惑っていたのに、なぜかおやすみのキスが自分の中で自然なものになっていた。

好きになってもらえるよう願われても……。

何も言えずに黙っていると、長嶺さんは小さく笑って螺旋階段を下りていった。彼の普段の生活スペースは一階らしい。

「おじゃましまーす」

使っていいと言われた部屋を開けると、そこはシングルベッドとクローゼットしかないシンプルな空間だった。ここも綺麗に清掃されていて埃ひとつ落ちていない。窓にある青いカーテンもしっかりノリが効いていてまだ新しい。

はぁ……ようやく落ち着ける、のかな?

窓から外を見ると、眠ることを知らない銀座の夜景がぼんやりと広がっていた。
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