かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
恭子さんは海外暮らしが長かったから、こういう感情表現をしてもおかしくない。パリにいたときにだって、販売スタッフのおばちゃんから何度もハグやキスをされたこともある。

「さ、遅くならないうちに帰りましょうか」

呆気にとられてポカンとしている私をクスリと笑い、恭子さんは何事もなかったかのように帰り支度を始めた。

「そういえば……芽衣さんって彼氏とかいないの?」

「へっ!?」

唐突な質問に声が裏返ってギクリとする。

「彼氏なんていませんけど……仕事に集中したいし」

と言いつつ、長嶺さんの存在を自分に問い詰めると……なにも答えられない。仮の夫婦だなんて話したところでそんな曖昧な関係、普通なら理解しがたいだろう。

「恭子さんは? いるんですか?」

色々と突っ込まれる前に質問を切り返すと、恭子さんは照れくさそうにはにかんだ。

「ええ、いるわよ。すっごく素敵な人でね、できることなら結婚したいって思ってるくらい」

「ふふ、いいですね。そういう相手がいると毎日が楽しいですよね」

恭子さんが好きになる人って、どんな人なんだろう?

頬をほんのり赤く染め、その意中の彼の話をする恭子さんはどことなく初々しく私よりも年上で大人の女性だけど、可愛らしく思えてならなかった。
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