涙 のち 溺愛


一呼吸置いて、青山は続ける。

「───言われても、仕方なかった。
だって、俺、その子達に触れることが出来なかったから」


「──へ?」

「向こうから告白してきて。

お前を諦めて、切り替えて付き合おうと思ったし、変な言い方だけど、好きになろうと努力した。

──でも。どうしてもダメなんだ。
お前以外の女に触ると、吐き気がして。
多分、俺も女性不信になってるんだろう。

一人ならともかく、二人だ。
間違いないと思う」

そこで言葉を切って、青山は『ふぅ』と大きく息をついた。

そして、徐に、私の手を取った。
ビックリして手を引こうとしたが、青山はしっかりと握りしめて離さない。
そのまま、私の眸を捉えて。
真剣な口調のまま、口を開いた。


「ほら、それでも俺、お前には触れるんだ。
二人で飲んでたときも、たまたま手に触れたり、お前の頭撫でて、髪の毛ぐちゃぐちゃにしたこともあったろ?

そういうのが、お前だと全然大丈夫だった。


──いや、むしろ触れたかった」

『やだ、なんか変態っぽい!』と、いつもの私なら茶化すだろう。

でもソレを言わせない雰囲気が、青山にはあった。

「あ……、えっ……………」

何て答えていいかわからずに、私は声を出そうとする。
でも、言葉にならなくて。

驚きと、恥ずかしさでパニックになる。
ぐるぐると考えていると、急に手を引っ張られて、立ち上がる格好になった。

そのままバランスを崩して、青山の胸に飛び込む。

そんな私を、青山はぎゅっと抱き締めて。

「ずっと──ずっとずっと、こうしたかった」

耳元で、囁くように言った。

「 江藤、俺、お前のこと好きだ。
自覚してから4年くらい、ずっとお前のことだけ好きだ。

──すぐに、返事は聞かない。
お前が逃げるのは分かってる。

何年かかっても、何十年かかっても、絶対に、付き合う気にさせるから。
で、結婚してもらうから。

まず、また二人で会えるようにして。

今日は、それだけでいいから、約束して」



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