愛は、つらぬく主義につき。 ~2
7-2
白と青を基調にしたエキゾチックな店内はそこそこの席数で、ランチ目当てなのか女性客同士が目に付いた。わりと年齢層も高めな印象で賑やかすぎず、静かすぎない明るい雰囲気。天井のシーリングファンライトもお洒落だし・・・意外だった、ここまで来たら廃ビルか倉庫に連れてかれる覚悟もしてたのに。

千也さんはウエイターの案内を断りそのまま奥に進んでく。解放感のあるガラス張りの向こうにオープンテラスが見え、デッキに繋がる自動ドアへとあたしを誘う。

紫外線は気になるけど中に籠もってるのが勿体ないくらいの日和で、頬を撫でてく風も心地いい。大きく張り出した軒下には、マリンブルーのクロスがかかったテーブル席が3つだけ。リザーブ専用みたいだった。

柔らかい葉色のゴールドクレストとテラコッタタイルの外壁に囲われた中庭は、窓際に面してる席からも眺めがいいだろうと思う。家に見立てた壁にアーチ型のドアや飾り窓が作り付けられ、置かれたベンチには可愛らしいパンジーの寄せ植えの鉢が並んでる。とある館にふと紛れ込んだみたいな空間。

極道者の匂いが薄いからか。他にお客もなく真ん中の席に座って手元に目を落とす彼は、まるで違和感なく空気に溶け込んでた。

「お待たせ。連れてきたよ」

千也さんが相変わらずやんわりした口調で声をかける。

「悪かったね千也」

顔を上げてそう労うと、テーブルから少し距離をとって立つあたしを見やり、高津さんは穏やかな笑みを浮かべる。

「・・・会いたかったよ宮子さん」
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