愛は、つらぬく主義につき。 ~2
真に相談してラインする、と30分ほどでお喋りを切り上げたあたし。紗江もそろそろお夕飯の買い物時間だろうから。

おばあちゃんを手伝って作ったおいなりさんと煮染め入りの重箱を風呂敷で包み、哲っちゃんちに戻る途中で事務所に寄る。

「お疲れさまです」

声をかけながら分厚い鉄のドアを開くと、中から威勢よく『お嬢、お疲れっス!』と野太いユニゾン。

「宮子」

左奥のパーティションの向こうから声だけが聞こえて、そのままそっちに足を向ける。

「帰ってたの?」

仕切られて個室みたいになってる真のデスク。パソコンのモニターが4つも並んでる前でTシャツにワークパンツの格好したダンナが、回転イスごと振り返った。

「ん、さっき。・・・差し入れ? サンキュな」

ぶら下げてた包みを若衆の一人に渡させると、今度はあたしを自分の膝の上に乗せ、目だけで唇をよこせと強請る。誰も覗かないのをいいことに。

ワルツを踏むみたいな柔らかいキス。甘く溶かされてどこにいるのかも忘れそうな、離れがたくなりそうな。

「・・・いい加減にしろ、お前ら」

壁ドンされて、ドスがきいた榊の低い声に現実に引き戻されたときの気恥ずかしさったら!
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