愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「オレ達はどうにもしてやれないけどさ。もしなんかあった時、真っ先に宮子がオリエさんを支えてやりな。たぶんそれが一番の助けになんだろ、相澤代理の」

指で目尻を拭ってくれた遊佐が優しく笑う。 

「高津の動きは俺も気にしておく。言っとくが、“一ツ橋の虎徹”を見くびるなよ。あの人も本気じゃねぇから高津はまだ生きてる、・・・そういうことだからな」

どこか不敵に仁兄が。

二人の言うとおりだ。胸の内で深呼吸した。
相澤さんを信じて、織江さんの力になる。あたしにできることを考えよう。本家の娘の立場が役に立つなら、いくらでも利用する。お父さんや哲っちゃんに泣きついてでも!


ねぇ遊佐。
本当は。

高津さんの気持ちも分かる気はするよ。
遊佐の脚を()いた人間は、何も失ってない。あんたの人生を台無しにしといて、のうのうと生きてる。・・・そう思うときの、あの耐えがたい絶望感を。あたしも消せずにいるから。

囚われたまま生きる方が苦しいのに。どうして高津さんは。

でも問いかけを、そっとココロの奥底に仕舞った。・・・今は。


「・・・うん、そうだね。あとで織江さんに、いつ遊びに行っていいか電話してみる」

「そうしてやりな。相澤代理も、新年の挨拶回りでしばらくは忙しいだろうしさ」

わざと明るく言ったのを。目だけで笑い返した遊佐は、あたしを引き寄せて頭の天辺にキスを落とす。

「他人の心配もいーけど、宮子の一番はオレだって忘れてない?」

「そうだっけ?」

薄らとぼけて。「哲っちゃんの次くらいじゃなかったっけ?」

「へぇ・・・、そんなコト言っていーの」

あ。イジワルな顔。・・・なんかそれ、もうクセになりそう。

「明日、紗江と会うついでに初詣行こうと思ったんだけどさぁ? 一番じゃないなら、オレと行ってもつまんないよねぇぇ?」


キレイなカオした悪魔が、したり顔でほくそ笑んでる。
ウソです、許してってばぁっ、遊佐~~。

< 40 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop