愛は、つらぬく主義につき。 ~2
脚の自由が利かない遊佐にできることは限られる、どうしても。お父さん達が仁兄の補佐役に決めたのを身内びいきだって。いい顔しない人間もいるって仁兄から聞いてた。

遊佐は陰で言われてるのをたぶん知ってる。面と向かって言うヤツもいるかもしれない。でも絶対に泣き言は言わない。行動で結果で、周りを納得させるしかないのを知ってる。

近ごろ気が付いたらリビングのシェルフに色んな本が並んでた。お金の稼ぎ方だとか人の動かし方とか、クラウドの活用法だとか。学校の授業なんかサボってばっかだったくせに。ファッションと趣味の雑誌くらいしか買って読んだりしたこともなかったのに。

人のナン倍も努力しなきゃダメなのを遊佐が一番よく分かってるから。必死な姿は誰にも見せずに、あんたは一人で戦ってる。臼井(うすい)宮子(みやこ)の隣りに、遊佐(ゆさ)(まこと)が正々堂々と居られるように。

古参のタヌキじじィやキツネと渡り合えなきゃ、一ツ橋を支える柱になれやしない。潰れるくらいお酒に付き合うのも遊佐の意地だって・・・分かってるよ。でもね。

胸の奥がきゅっと痛む。

ムリはしないでよ。あんたの体をそんなにイジメないで。急がなくていいから、まだ時間はあるから。

ねぇ遊佐。一生けんめい前に進もうとしてるあんたに肩を貸すのはきっと榊や仁兄。あたしはね。・・・時には躓いて傷付くかもしれないあんたを何度だって抱き起こして、手当てしてあげるの。胸に抱きしめて、傷が癒えるまであたしがどんなことしても守るから。

大船に乗った気でもっと力抜いていいんだからね?

今ごろ着替えもしないでベッドに転がってるハズの男前を思い浮かべ。小さく笑みをほころばせた。







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