愛は、つらぬく主義につき。 ~2
3-3
陽も落ちて外がすっかり真っ暗になった頃。榊から、あと10分で着くって迎えのラインが。
由里子さんも予定があって帰り支度を始めると、雅ちゃんを真似して椿ちゃんにまで『だめぇ』とおねだりされた。・・・うう、持って帰りたいカワイさっ。

「由里子さんも宮子さんも、また遊びに来てくれるから。今日はバイバイしなくちゃね? そのうちパパも帰ってくるでしょ?」

「ぱぱ、いつかえってくるのー?」

「お仕事がおわったら帰ってきてくれるから、ごはん食べて、おふろと歯みがきして待ってなくちゃね。いい子にしてたら藤君がおいしいオヤツくれるかも!」

「ぱんけーき、たべたーいっ、くりーむの」

藤さんを出汁に使って織江さんが二人を上手く乗せてく。

こうして見てると、雅ちゃんはどっちかって言えば顔付きは相澤さん寄りで、根がおおらかそうなところは織江さん似。
椿ちゃんは顔はどっちって言い難いんだけど。意思の強そうなつぶらな瞳とか、わりと好き嫌いがハッキリしてるとこは“虎徹”似なんじゃないかって密かに思う。

まだ。雅ちゃんも椿ちゃんも大好きなパパが何者かを知らない。 
いつか知っても。相澤さんの愛情は本物だから大丈夫。なにも壊れたりなんかしないきっと。

願うように優しい光景に目を細めて、あたしは笑みをほころばせた。

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