溺愛なんてされるものじゃありません
「俺は赤崎が高成に告白されたと聞いてから内心は穏やかではなかった。ずっと高成が振られればいいのにと思うような嫌な男なんだ。」

「えっと、高成さんにはお付き合いできませんとお断りしました。昨日会議資料を床に落として拾ってる時に。仕事中なのは分かっていたのですが…申し訳ないです。」

私は苦笑しながら主任に報告した。

「あの時に?高成と仲良く話してた訳じゃないんだ。そうか…断ったのか。」

そしてお互い沈黙し、なんとも言えない空気が流れる。

「あっテレビ、テレビつけてもいいですか?」

「えっあぁ。」

私はこの空気を変えるためにリモコンを手にして適当にテレビをつけた。そして私達はテレビを見ながらビールを飲む。

テレビではちょうど水族館でロケをしているのかイルカのショーが写っていた。芸能人達が最前列に座り、イルカのショーを楽しんでいた。

「イルカのショーかぁ。実際に見たらもっと迫力あって楽しめるんでしょうね。」

何となくつけたテレビ番組に私はついつい見入ってしまった。

「今度の休みに水族館行こうか?」

イルカのショーをガン見している私に主任が言う。

「二人で…ですか?」

「あっ嫌なら全然断ってくれていいんだ。」

二人でってデートですよね…そう思うとなんだか嬉しくなった。

「水族館行きたいです。」

「じゃあ行こうか。」

「はい。」

私は嬉しさが顔に出て思わずはにかんでしまう。

「なぁ赤崎。」

「何ですか?」

「抱きしめていいか?」

主任は私の隣に座り、私の返事を待っている。抱きしめていいかなんて普通聞きますか!?

「それ、許可が必要なんですか?」

「だって逃げられたくないし。」

酔いが回ってきたのか、ニィッと笑みを浮かべている主任は、まるで私の反応を楽しんでいるかのようにも見える。

「…どうぞ。」

私は恥ずかしくてそっぽ向いたまま返事をした。

私の返事を聞いた主任は優しく私を包み込む。ぎゅっと抱きしめられ、私は主任の胸の中で温かさを感じていた。

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