溺愛なんてされるものじゃありません
シャツを着てリビングへ行くと、いい匂いがしてきた。

「こんなものしか作れなかったけど…。」

そう言って私の前に鍋焼きうどんを置く。熱々のうどんの上に卵も落としてあってめっちゃ美味しいそう。こういうのをサラッと作れる才能が羨ましい。

「ありがとう。頂きます。」

私は遠慮なくフゥフゥしながら鍋焼きうどんを食べる。蓮さんは私の前に座り、その様子をじっと見ている。

「なんか美織が俺のシャツ着てるのっていいな。」

「そんなに見られたら恥ずかしいって…。それよりお見合い、どうやって解決したの?円満って言ってたけど。」

お見合いの話をした瞬間、蓮さんの表情が暗くなった。一体何があったというの?

「……れた。」

「え?」

蓮さんはかなり小さな声で何かを言ってるけど、私は聞き取れなくてもう一度聞き直した。

「結論から言うと見合いを断られたんだ、俺。」

「断られたって…蓮さんが?断ったんじゃなくて?」

蓮さんが断られたって何かの間違いじゃ…と思ったけど、蓮さんの表情はどよーんとしていて、なんだか本当に断られたっぽい。

私は蓮さんのお見合い話を詳しく聞いた。

蓮さんの話によると、場所は高級料亭で最初は蓮さんと社長、お相手の社長令嬢とその父親社長の4人で懐石料理を堪能しながら話をして、その後社長令嬢と二人きりになったらしい。

それからが問題で、蓮さんは社長令嬢と話をするため中庭を二人で歩いた。でも社長令嬢は歩くのを中断、具合が悪くなったのか心配した蓮さんが社長令嬢の顔を覗き込むと『もう限界です』と赤い顔して走り出してしまった。蓮さんは『待って下さい』とっさに彼女の腕を掴んだけど、恐らく蓮さんの悩殺フェロモン(蓮さんから溢れてるオーラをこう呼ぶ事にした)にやられた彼女はその場に倒れてしまったらしい。

慌てた蓮さんは彼女を父親と社長のいる部屋に連れて行き目がさめるまで待った結果、社長令嬢から『私は蓮様の刺激に耐えられません。』と言われ、正式に見合い話はなかった事になった。

< 56 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop