溺愛なんてされるものじゃありません
「やだぁ美織ってば。旦那と仲良しなんだから。」

今まで蓮さんの周りにいた女子達が私と高成さんの方を見ながらニヤニヤする。

「だから違うって。」

私が否定しても、はいはいっと言って話を流される。もう、蓮さんいるのに変に誤解されたらどうするのよ。

「そうそう高成さん。美織が彼氏はスタイル抜群の女性が好きらしいって気にしてるから、美織のスタイルには触れないであげて下さいね。」

私も高成さんも思わずむせ返る。

「ちょっ…ちょっと、何言い出すの!?」

蓮さんに聞こえないように慌てて声を出したけど…凄く視線を感じる。見るのが怖いけど、そろ〜っと蓮さんの方を見た。ほら、やっぱりどういう事だ?と言わんばかりの鋭い視線で私を見ている。

「…そう言えば俺も腹減ったな。少しここで食べていってもいいかな?」

「もちろんです。ほら美織、蓮様…いや平国主任に取り皿を準備して。」

蓮さんがにこやかに言うと、周りの女子達は急いで肉と野菜を焼き始める。その手際の良さを仕事中に発揮すればいいのに…とは口が裂けても言えないが、取り敢えず言われた取り皿と箸を準備して蓮さんに渡す。

「ど、どうぞ。」

「ありがとう、赤崎さん。」

気まずくてなるべく目を合わせないように蓮さんに渡すと、蓮さんは極上の笑顔を見せながら私から取り皿と箸を受け取り、私の耳元でコソッと囁く。

「帰ったら説明してもらうからな。」

蓮さんは流し目で私を見て、何事も無かったように網の上の肉と野菜を食べる。説明って言われても何を言ったら良いものか。蓮さん、スタイル抜群の女性が好きでしょ?って…聞けるわけないじゃん。

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