溺愛なんてされるものじゃありません
はぁっと溜め息をついてクルッと後ろを向くと、異様な光景が目に入った。

「み、みんな…どうしたの!?」

さっきまで蓮さんの周りにいた女子達が、蓮さんから離れて遠くにいるではないか。

「無理無理無理…ってか、何で美織はそんなに平然としていられるの?」

「えっ何?何の事?」

みんなの言っている意味が分からなくてキョトンとしていると、裕香がこっそりと私に耳打ちしてきた。

「久々に蓮様から悩殺フェロモンが出てるのよ。」

「悩殺フェロモンって、あの刺激が強過ぎて近づくだけで倒れそうになるってやつ?」

「そうそうそれ。さっき美織が取り皿を渡した時に見せたあの笑顔にみんなやられたのよ。どうやら悩殺フェロモンは美織の前でしか出なくなったのね。」

「どうしよう。私もフェロモンにやられた演技した方がいいのかな?」

「そんな事しなくても大丈夫と思うけど。」

裕香と一緒に女子達の方をそっと見る。

「やっぱり蓮様のフェロモンは刺激的だわ。美織の鈍感さが羨ましい。」

女子達は私を見ながら蓮さんの話題で盛り上がっていた。蓮さんとの関係がバレてなくて一安心だけど、鈍感って言われちゃってるし…複雑な気持ちだ。

「じゃあ俺達はこれで失礼します。最後まで楽しんで下さい。」

私達が離れたところでコソコソしていると、蓮さんと高成さんがペコっと頭を下げて次の所へ行ってしまった。

悩殺フェロモンが治ったのか、蓮さんは次の所でも女子達に囲まれている。私の前だけしか悩殺フェロモンが出ないのは喜んでいいのかな。

この後も蓮さんはずっと忙しそうで一緒に話をする機会はなかったけど、今日のバーベキュー大会は楽しかった。

そして楽しかった時間は過ぎ、私達はまた貸切バスに乗って山を降り、社内イベントは終了した。

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