溺愛なんてされるものじゃありません
少しの沈黙の後、蓮さんは私の肩を抱きグイッと自分の方へ引き寄せる。

「お前は馬鹿か。そんな訳ないだろう。俺はいつでも…今でも美織を抱きたくて仕方ないのに。」

「だって…クリスマス以降、全然私に触れてくれないし。」

私が蓮さんの顔を見ると、蓮さんの唇が私の唇に触れた。

「それは…俺がビビってたからだ。」

唇が離れると、蓮さんがそう呟いた。

「ビビったって何に?」

私が聞き返すと蓮さんは私から手を離し、前髪を搔き上げるような仕草をする。そして少し照れを隠すような表情で話し始めた。

「…美織を抱いた次の日に別れようと言われて、それが元彼のせいだと分かっても、もしかして本当は身体の相性が良くないっていうか、俺が下手過ぎて嫌気がさしたんじゃないかって思うと…怖くて手が出せなかったんだ。また美織が別れようと言い出すんじゃないかって。」

えっ…蓮さんそんな事思ってたの?全然違うのに。

「何で…全然気持ち良かったよ?私、嬉しかった。」

私は勢いよくパッと蓮さんの顔を見て、思わず口走る。そして言った後に自分の言った言葉が恥ずかしくなり、顔が赤くなった。

再び沈黙…のち、蓮さんの力強い真っ直ぐな視線が私を捉えて離さない。

「そんな事言われたらもう止まらないからな。今日は帰るって言うなよ…っていうか帰さない。」

「…うん。」

私達はしっかりとお互いの唇に触れ合い、しばらく濃厚なキスを繰り返す。

< 93 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop