ボクソラ☆クロニクル
「ちなみにお前、武術はどうなの?」
「父から護身術くらいは習っているので全く何も出来ない訳ではないと思うんですが……」
「それならなんで、酒場であんなにビビりちらかしてたんだよ」
と、様子を見に来ていたレオンさんも口を挟んできた。
「だっていくら知っていると言っても教会に押しかけてきた強盗退治した以外に実戦経験ないですし、乱闘騒ぎなんて経験はなかったから。あれだって1人でどうにかしたわけじゃないですし。目の前であんな大捕物始められたら、誰だってびっくりしますよ!」
「いや、それでもなかなか凄いな」
昔からある程度のことはそれなりの水準になるまでこなすことが出来るのだが、これという特技は1つもないのだ。要するに、器用貧乏なのである。
「そんな人間に空賊団の戦闘員のお相手が努まるわけがないじゃないですか……」
「気にすんなよー。どうせピノは新しい相手と遊びたいだけだから」
慰めにならないレオンさんの言葉に、目の前のピノくんがコクコクコクコク、とすごい勢いで首を縦に振っている。
「本当に本当に、ボクはズブの素人に毛が生えたみたいなものですよ!」
「いいよー」
こっちがよくないよー!
そう言いたいところだけれど、きっとこれはもう引くことなんて出来なさそうだ。腹を括るしかない。
ええい、女は度胸ってお父さんにもならったでしょ!
覚悟を決めて、私は剣の持ち手をぎゅっと握りこんだ。
「はぁッ!」
距離を詰めて、ピノくんへと切り掛かる。
第一撃は交わされてしまい、すかさず第二撃へ。
しかし何度切り込んでいっても、ピノくんは表情1つ変えないでひらりひらりと攻撃を交わしていく。まるでヒラヒラと落ちてくる鳥の羽を切ろうとしているようだ。切り掛かる際の風をまといながら羽が刃を交わしてしまうように、ピノくんはゆらゆらと刃を交わす。