かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「あれ? もしかしてこの指輪、荻原のじゃなかった?」

 不安な顔で聞かれ、慌てて答えた。

「ううん、私の。……見つけてくれてありがとう」

 きっと気づいたからこそ、敢えて聞かないでくれているのかもしれない。

「ならよかった」

 ホッとした野沢君から指輪を受け取り、また落とさないように左手薬指にはめた。

「そうだ、忘れるところだった!」

 思い出したように言うと、野沢君はポケットからお札を取り出した。

「荻原、多く払い過ぎ」

「え……それでわざわざ追いかけてきてくれたの?」

 月曜日でもよかったのに。
 受け取りながら聞くと、野沢君は小さく首を振った。

「早く帰るって言ってなかったから、心配になってさ。……もしかして誰かになにか嫌なことをされたのか?」

 身に覚えのないことを言われ、目を瞬かせてしまう。

「あ……そんな! 違うから。ただ、その……ちょっと用事を思い出して」

 本当の理由が理由だけに、気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。

「それって……」

 なにかを言いかけたところで、野沢君は口を結んだ。

「野沢君?」

 不思議に思った時、背後から両肩を掴まれ後ろに引かれた。
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