かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 聞かれたことに答えると、野沢君は目を丸くさせた。そして歩道で足を止めると、力が抜けたようにその場にしゃがみ込む。

「マジかー……。料理までできるとか、どこまで完璧な旦那と結婚したんだよ」

「ちょ、ちょっと野沢君!?」

 聞かれたらマズい〝旦那〟と〝結婚〟のワードに周囲の目が気になり、慌てて私も膝を折った。

「結婚のことは内緒でってお願いしたでしょ?」

 声を潜めて言うと、野沢君はハッとして口を手で覆った。

「悪い、つい……」

「もう、気をつけて」

 いつ、どこで話しが漏れて噂が広がるかわからないのだから。

「なにしてるの?」

 ふたりで屈んだままでいると、怒りを含んだ声がかけられた。すぐに声のしたほうを見ると、険しい表情で私たちを見つめていたのは敬子だった。

 野沢君とともに急いで立ち上がる。

「なにって、別になにもないよな? 荻原」

「う、うん」

 ふたりで笑顔で説明するものの、それが返って敬子の疑惑を増したのかもしれない。

「なにもないようには見えなかったけど? 歩道にふたり一緒にしゃがみ込んでいたんだから」
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