かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 すぐに下りようとしても、しっかり腰には腕が回ったままでそれを許してくれない。

「ちょっと、将生?」

 睨んで怒りを露わにしているというのに、なぜか将生は嬉しそうにニコニコしちゃっている。

「誰かに見られないか心配する小毬も、怒る小毬も可愛い」

「なっ……!」

 サラリととんでもないことを言われ、声にならず口をパクパクさせてしまう。

「そうやって照れるところも可愛くてたまらない。……なにより俺の仕事場に小毬がいると、悪いことしたくなる」

 ニヤリと笑うと、将生は荒々しく私の唇を奪った。

「んっ……ぅんんっ」

 喉で呻く声が自分のものとは思えないほど艶が含まれていて、羞恥心でいっぱいになる。

 だけど将生の舌は私の舌を回すように舐め、自分の口腔内に引き込んではキュッと甘噛みする。

 そうされるたびに自然と声は漏れてしまい、止める術がない。

 舌先から甘さが広がり、抗う力が奪われていく中、将生の手が裾から入り込み、素肌を撫でた。

「だめっ、将生っ……!」

 さすがにこれ以上は無理。

 必死に将生の手を押さえて抵抗する。すると彼は私の耳に顔を寄せた。

「大丈夫、さすがに最後まではしないから。……だけど少しだけ小毬に触れさせて。家まで我慢できない」

 甘い声で囁かれ、脳髄まで痺れるような気がした。だけどこのままされるがままでいるわけにはいかない。
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