かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「もう絶対離さないから。……小毬は俺のものだ」

「……んっ」

 独占欲を露わにすると、先ほどとは打って変わり荒々しく唇が奪われた。

 すぐに割って入ってきた彼の舌に、甘く融かされていく。

 どんなキスをされたら弱いのか、すべて知られている。こうして執拗に攻められたら一気に身体中の力が抜けてしまうんだ。

 次第に力が入らなくなるタイミングも把握している将生は、素早く私の身体を抱き抱えた。

「将生……?」

 呼吸を整えながら彼の名前を呼ぶと、将生は私の部屋に足を踏み入れた。

「ご飯はあとで食べよう」

 そう言うと優しくベッドに下ろされ、すぐに彼が覆い被さる。

「小毬……」

 余裕ない顔で私の名前を呼ぶと、再び塞がれた唇。

 ずっと最終ゴールだと思っていた結婚は、自由のはじまり……だったはず。それなのにこうして将生とキスを交わすたびに、自由ってなんなのかわからなくなる。

 私は本当に自由になれたのだろうか。

 甘いキスを落とされるたびに思考さえ奪われていく。

 だめだ、なにも考えられなくなる。将生に触れられるといつもそう。甘い刺激に抗えなくて、応えてしまうんだ。

 将生のことを好きかもわからないのに……。

 次第に将生の身体も熱を帯びて、呼吸が荒くなる。再び「小毬」と呼ばれた瞬間、私の思考は完全に機能しなくなった。
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