かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 そのまま彼女の耳を甘噛みし、柔らかい膨らみに触れようとした時、珍しく小毬が声を張り上げた。

「お願い、待って……!」

 大きな声にびっくりして手を離すと、すぐさま彼女は横を向き、身体を小さくさせた。そして必死に顔を隠す姿に胸が痛む。

 さっき俺のことが苦手と言っていたが、本当は嫌われているんじゃないだろうか。だから寝室も別にした?

 ずっと小毬は言葉にしなくても、俺の気持ちを理解してくれていると信じていた。だからキスも受け入れてくれて、同じ気持ちで何度も肌を重ねてきたと思っていたが、俺の思い違いだったのかもしれない。

 よく考えれば、小毬からは婚約解消を言い出せない立場だったよな。……俺がそばにいることで、ずっと苦しい思いをさせていたのだろうか。

 たとえそうだったとしても、今さら手離すつもりはない。いや、できるわけがない。
 俺にとって小毬は、かけがえのない唯一無二の存在だから。

 思いを巡らせていると、小毬は顔を隠したまま言った。

「恥ずかしいの、すごく……」

「え……恥ずかしい?」

 嫌じゃなくて?

「なに言ってるんだよ、もう何回もしているだろ?」

 その度に最初は身体を強張らせるけれど、次第に俺を受け入れる。それに多少は恥ずかしがるが、初めてした時もここまで恥ずかしがらなかったぞ? それなのになぜ急に?

 首を傾げる俺を手の隙間からチラッと見ると、小毬は声を震わせた。
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