かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 最後に触れるだけのキスを落とすと、将生は私の腰に両腕を回して抱き上げた。

「きゃっ!?」

 怖くて彼の首にしがみついた私の頬にキスをしながら、将生は寝室へ向かった。優しく私をベッドに下ろすと、強く握っていたせいでクシャクシャになってしまった紙袋をベッドサイドに置く。

 ギシッと音を立てて私の上に覆い被さると、将生の瞳の中に自分が映っているのが見えて、ときめいてしまう。

 髪に指を絡ませ、将生は愛しそうに私を見つめた。

「さっきの、信じてもいい?」

「……えっ?」

「小毬が初めて好きになるのは、俺だって。……そんな未来がくると信じて、これからも小毬のそばにいてもいいか?」

 将生……。

 胸が苦しくて痛い。どうしてこんなに痛みを感じてしまうのだろうか。

 痛みを抑えながらそっと手を伸ばして、将生の頬に触れた。

 彼を悲しませたくないから? もっと幸せそうな顔を見たいから? 理由はわからないけれど、質問の答えはすぐに出た。

「うん」

 私も将生のことを好きになる未来が訪れてほしいから。

 私の答えを聞き、将生は苦しげに顔を歪めた。

「気持ちが通じ合えるまで抱かないって言ったのにごめん。……そんなこと言われたら、抑えられない」

 私も将生に触れたい、触れてほしい。……こんなことを思うのは初めてだ。

 熱く視線が絡み合い、ゆっくりと瞼を閉じると短いキスを何度もされ、幸福感に包まれていく。

 この日の夜、将生は何度も「好きだ」と囁きながら私を抱いた。

 彼のぬくもりに包まれながらもっと将生のことを知りたいと強く望んでいる自分がいた。
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